2024年2月27日に、
「札幌市いじめ防止等のための基本的な方針」の
改定案について、文教委員会で質疑しました。
私の質問の概要です。
小形委員
冒頭に、教育長から経過について説明がありました 。
札幌市の重大事故調査検討委員会から、通算27回の調査検討委員会を行った後に、
報告書が出され、そこに再発防止策の提案があり、
そのことから本市のいじめ防止等のための基本的な方針を改定するという
流れになっていると理解しております。
再発防止のために、これまでの「いじめ防止等のための基本的な方針」を改定し、
より再発防止策を強化するのは当然のことだと思っております。
同時に、1人の中学生が悩み、傷つき、絶望の中で自死することを選ぶしかなかった。
この壮絶な苦しみをなぜ生じさせてしまったのか、深く考えなければなりません。
しっかりと振り返ることが再発防止に繋がると考えております。
そこで、この検討委員会報告書の中身に少し触れていきたいと思います。
この度の報告書の中には、令和3年・2021年3月17日に、在籍する学校で起きた
「屋上案件」と言われるものが書かれております。
「S1とともに、校舎の屋上に出ようとして、キャンプ用のヘッドライトや
安全ピンを準備し、施錠されている扉の鍵を開けようとしたところを
担任ではない教員に発見されるということがあった」という部分です。
私はこのときの対応が大変重要だったと思っています。
この報告書ではさらに詳しく、この案件の翌日に、
「学級担任が、扉の鍵を開けて屋上に侵入しようとした理由として、
飛び降りるため、死にたい、ということを聞き取っていたが、
それが他の教員との間で共有されることがなく、いたずらとして処理された。」
「自殺の意図を伝えたにもかかわらず、複数の教員に受け止めてもらえず、
むしろ強く叱責されるのみであったこととなる」、と書いてあります。
率直にお聞きしますけれども、なぜこのときに、この子の動き、心の吐露、
こうしたものを受け止めることができなかったのか。
なぜ、いたずらとして処理したのか。学校現場でこのような対応をしてしまった背景、
その要因はどこにあるとお考えなのか、教育委員会としての見解をお尋ねします。
広川児童生徒担当部長
この度の事案におきまして、子どもの発しているSOSを捉えることができなかったのは、
学級担任等の一部の教員がいじめの問題を抱え込み、
学校いじめ対策組織として適切に対応できていなかったことにあると
受け止めております。
こうした反省を踏まえまして、このたびの改定案におきましては、
子どもの些細な変化も見逃さないよう、校長のリーダーシップのもとで、
いじめの情報を早い段階から学校全体で共有し、
専門家も加えた学校いじめ対策組織において対応する必要があるというふうに
捉えているところでございます。
小形委員
新たに「7」として加えた、「一部の教職員による抱え込みを防ぐための取り組み」
という改定部分のことだと思います。
この報告書に、「当該小学校の教職員が小学校基本方針に掲げた、
常に子ども理解に努めるという姿勢が不十分であったと言える」と書かれているわけです。
次に「公表に際しての視点」で伺いたいんですけれども、
12月21日に公表した報告書は、屋上の扉の鍵を開けようとして、
屋上に上がろうとしたこの「屋上案件」などを含めて多くを黒塗りにして公表しました。
このことについて本市は1月26日に、
「調査の趣旨に沿って公表内容を検討するという視点が十分ではなかった」として、
2月14日に再公表をしました。
なぜ12月公表の時点で再発防止の観点が不十分だったのか。
国からは「いじめ重大事態の調査に関するガイドライン」が2017年(平成29年)に
出されており、十分にこのガイドラインは理解しているはずだと思いますが、
なぜ再発防止の観点が不十分になったのか、
その理由について伺いたいと思います。
広川部長
国の「いじめの重大事態に関するガイドライン」は、
重大事態発生後の対応や調査について示したものでありまして、
結果の公表にあたって、情報公開条例等に基づく対応のところにつきまして、
慎重になるあまり、再発防止に資するという観点が十分ではなかったと、
とらえているところでございます。以上でございます。
小形委員
文科省が出している「ガイドライン」にはですね、
第8・個人情報の保護という項目があり、その最後に、
「学校の設置者および学校は、いたずらに個人情報を盾に
説明を怠るようなことがあってはならない。」と書いてあります。
これは、公表ではないと理解されるのかもしれませんが、
当然ながら市民に向かって説明をするわけですから、
公表というのはイコールです。
私はここの受け止めがなされていなかったのではないかという印象を持っております。
この「屋上案件」の対応について、この報告書では、
いじめがあったと認定する根拠・要因となっています。
そして、「いじめアンケート」についても、何の対応もなかったということが、
認定する根拠だと書いてありました。
小学校4年生のときからの調査になっておりますけれども、
4年生のときも5年生のときも6年生のときも、
学校の「悩みいじめアンケート」には、「いじめを受けている」「ある」と
答えていたけれども、何も対応がなかった。
そのことは一部の教員の抱え込みによってわからなかったのかもしれません。
しかしですね、6年生になって、道徳のノートにこう書いていると報告されています。
令和2年6月24日付の道徳ノートにおいて、
「先生に言ったけど、お話しておくねって言ってたのにしてくれないので、
あてにしないで友達に言った。」
そして、7月29日付の道徳ノートには、
「先生に相談するのはあまりしません、なぜなら、相談してくれる先生と
相手にしてくれない先生がいるからです」、こう書かれているんですね。
6月、7月の時点でも、アンケート以外で、
この子の強烈な、先生への「自分のことを見てほしい」というメッセージがあり、
それを間違いなく読んだはずなんです。
ところがこの部分は、12月の公表の段階では黒塗りになっておりました。
これは先ほどの「屋上案件」と同様に、個人情報ではないと思うんです。
学校の対応が不十分だった、という部分を黒塗りにして発表した、
ということになるわけです。
今の道徳ノートに書いたところも、黒塗りのまま発表したんです。
これはですね、学校にとって不都合なことを隠そうとした。
いいですか。個人情報ではなくて、不都合なことを隠そうとした、ということであります。
そして、この子にとってはですね、先生に言ったけど対応してくれない、
さらに調査する人が報告書に書いたのに、公表してくれない、
こういうことなのではないでしょうか。
だからもう一度繰り返しますけれども、文科省が示した「ガイドライン」にある、
「いたずらに個人情報保護を盾に、説明を怠るようなことがあってはならない。」
こう厳しく戒めていることを、教育委員会がやってしまったということだと思うんです。
だからその時に、保護者がマスコミに発表した手記に、
「今でも、学校に対して、教育委員会に対して不信感があります」と書いているんです。
この保護者の方は何度も、「2度と起こさないで欲しいんだ、だからもっと公開してくれ」と
求めているんだ、とマスコミに聞かれて答えております。
このご遺族の方々の強い願いに今度こそ誠実に応じるべきだ、ということを
私は強く求めておきたいと思います。
この「屋上案件」が起きる1年前ですね。2020年の3月ですけれども、
札幌の秋元市長は、2019年6月に2歳の女の子が虐待を受けて亡くなるという
痛ましい事案が発生して、その検証報告書が出されたことから、
「職員の皆さんへ」というメッセージを発信いたしました。
全ての札幌市に勤める職員に向けたものでありましたけれども、
当該の学校では、このメッセージを読まれていたのかどうか、
教育委員会は確認をされたのか、伺いたいと思います。
広川部長
2019年の市長メッセージの学校での周知についてでございますが、
各学校におきましては、市長から直接メッセージを受け取り、
そのメッセージを読んだ上で、各学校で校内での研修等でその事案の重み、
そして再発防止に向けた取り組みについて共有しているところでございます。
教育委員会といたしまして、各学校でその取り組みがどのように行われたか
というところまで、直接点検をしているということはございませんが、
指導主事訪問、あるいは各研修の機会を捉えまして、
いわゆる虐待防止、2度と同じような事案を発生させないための取り組みについて、
周知徹底を図っているところでございます。以上でございます。
小形委員
メッセージを発信し、「これを読んでくださいね」と言っても、
現場でそのことがちゃんと受け止められているのかということが、
やっぱりこのときも問われただろうと思うんですよね。
市長はこのときに、この「検証報告書をぜひ読んでほしい」と言っております。
そして、「協働するということは、関係する複数の部局が折り重なって
仕事をするということ」なんだと。このことを深く理解してほしいという
発信をしましたし、もう一つは「支援が必要な方々の立場に立って考える」、
こういう仕事をしてください、と言ったわけです。
ですから、私、今回の再発防止の様々な方針は大事なことだと思うけれども、
現場にどういうふうに受け止めてもらうのか、
現場で具体的に自分の子どもたちと接するときに、どうやって生かしていくのかが
非常に大事なことだと思っております。
ぜひともこの「1人で抱え込まないための取り組み」というのを
実りあるものにしていただきたいと思っております。
この調査検討委員会が提案している再発防止策の中には、
「子ども理解のカンファレンスをいかに自校で実践できるかは、
今後具体的に検討を進めてほしい」と書いてあります。
しかも、その実践例を書いている書籍まで、何冊か紹介して記載しているんです。
ぜひ、こうした細かい最後のところまで、1人1人の教員の悩みをくみ取りながら、
どうやってやるか、というカンファレンスを徹底していただきたいと思っております。
次に、学校評価に関連して伺いたいと思います。
毎年、3月に各学校が教育委員会に「学校評価」というものを提出しております。
これはあらかじめ、教員やPTA保護者の方々、そして子どもたちに
アンケートをとりながら、自分たちの学校の特色や課題を共有して
教育活動を進めるためのものであります。
この検証報告書には、学校の様子について書かれているんです。
「当該生徒が在籍していた学年は、低学年の頃から、生徒指導上の問題が多く、
落ち着かない状態が続いていたようである。加えて、他の学年においても
問題が多数起きており、教員はその対応や予防に日々追われていた。」
この生徒が在籍していた当該校の
2018年度、平成30年頃から2020年度の学校評価において、
学校生活、あるいは教育相談などの分野の評価を、
受け取った教育委員会はどのように見ていたのでしょうか。
他の学校と比べて、あるいはこれまでのその学校の経年での推移などと比べて、
どう変化などを捉えていたのか、伺いたいと思います。
広川部長
学校評価に対する教育委員会の確認、そして学校への助言等についてでございますが、
学校評価で得られた情報につきましては、各学校を担当しております指導主事が、
学校訪問の際に学校長の方に、その改善すべき視点、あるいは今後取り組みにあたって、
逆に校長の方から要望をお聞きするなどの取り組みを進めております。
学校評価につきまして、いじめについての部分を必ず取り扱うということについては、
この度の方針で改めて明確化をさせていただいたところでございますので、
今後はこの学校評価での取り組みにつきましても、しっかり確認をしながら、
学校と家庭が連携を強化して対応できるよう取り組みを進めてまいりたいと
考えております。以上でございます。
小形委員
今も精神的ストレスから長期休暇に入る教員が一定数いると聞いております。
1人で抱え込んでいる教職員が今現在もいるのではないかと思っておりますし、
「あのクラスは大変だろうな」と思って見ている教員もいるのではないかと思うんですね。
ABCDの評価項目を設け、実際に子どもや保護者からもいろんな声を
聞き取りながら行う学校評価の大事なところは、
子どもたちの心身、あるいは精神的な状態が、つまり
学校に楽しく行けているのか、そして悩みや困っていることを先生に話せるのか、
先生が先生同士でそういうことをちゃんと伝え合ったりする場が、あるいは時間が
確保されているのかが大変大事だと思っております。
この点を、ぜひとも強化していただきたいと思います。
この調査をした委員長が、報告書の「おわりに」で書いていることは重みがあります。
なぜならばですね、この重大事態の報告書は今回は2回目で、
1回目の報告書が出されたときの「あとがき」にも書いてあるんです。
「教育委員会が生徒のいじめ理解を進め、安心して相談できる体制を
どのように作っていくのかが、いじめ予防の肝要であり、出発点であることを
認識するべきだ」と。前回の報告書です。
しかし、今回このような重大な事態が起きてしまったわけです。
ですから今回の報告書に書かれている中身を教育委員会が重く受け止め、
「今までにない強い決意のもとで、学校への取り組みの趣旨徹底を
指導して欲しいところだ。」と書いてありますから、
2度とこうしたことが起きないように取り組みを強化してください。
よろしくお願いします。